002 同じ「ライト」なのに、なんで違うの?
ちゃ〜坊が、二本のロッドを両手に持って首をかしげている。
ちゃ〜坊
「みなとじい〜。これ、おかしくない?」
みなとじい
「何が?」
ちゃ〜坊
「こっちも“ライト”。こっちも“ライト”」
みなとじい
「そうだな」
ちゃ〜坊
「同じじゃん」
みなとじい
「じゃあ、曲げてみれば?」
ちゃ〜坊は一本ずつ、ロッドを軽く曲げてみた。
ちゃ〜坊
「…………」
もう一度、曲げる。
ちゃ〜坊
「全然違うじゃん!」
みなとじい
「違うな」
ちゃ〜坊
「同じライトって書いてあるのに〜!(^^;」
ロッドには、その性格を表すために、いろいろな言葉が使われている。
たとえば、ロッドのどのあたりから曲がりやすいのか。
竿先に近い部分を中心に曲がるものを先調子、もっと胴に入るように大きく曲がるものを胴調子と呼んだりする。
ちゃ〜坊
「先調子……胴調子……」
みなとじい
「聞いたことあるか?」
ちゃ〜坊
「先っぽが曲がるのと、お腹が曲がるの?」
みなとじい
「ロッドに腹はないけど、まあそんな感じだ」
ちゃ〜坊
「じゃあ、みなとじいは?」
みなとじい
「何が?」
ちゃ〜坊
「先調子? 胴調子?」
みなとじい
「俺を曲げるな」
ところが、釣りの世界ではもう少し違った表現も出てくる。
ティップアクション、パラボリックアクション、ファースト、スロー……。
ちゃ〜坊
「待って待って!」
みなとじい
「どうした?」
ちゃ〜坊
「急に外国へ行かないでよ〜(^^;」
みなとじい
「外国じゃない。ロッドの話だ」
ちゃ〜坊
「先調子と胴調子だけでよかったじゃん」
みなとじい
「そうもいかないんだよな〜」
呼び方にはいろいろある。
しかも、メーカーによって表現や基準が必ずしも同じとは限らない。
だから言葉を知ることは大切だけれど、名前だけでロッドの性格を決めつけないことも大切になる。
ちゃ〜坊
「でも“ライト”って書いてあったら、ライトなんでしょ?」
みなとじい
「そのメーカーではな」
ちゃ〜坊
「……そのメーカーでは?」
みなとじい
「別のメーカーのライトと、まったく同じ強さとは限らない」
ちゃ〜坊
「え〜〜っ!」
みなとじい
「ウルトラライト、ライト、ミディアムライト、ミディアム、ヘビー……。強さを比べる目安にはなる」
ちゃ〜坊
「うんうん」
みなとじい
「でも、全部のメーカーが同じ物差しを使ってると思ったらダメだぞ」
ちゃ〜坊
「じゃあ……何を信じればいいの?」
みなとじいが、ちゃ〜坊の持っている二本のロッドを指さした。
みなとじい
「さっき、自分で分かっただろ?」
ちゃ〜坊
「え?」
みなとじい
「曲げたら違った」
ちゃ〜坊
「あっ!」
同じような表示があっても、実際に持ってみると違う。
曲がり方も違う。
張りの強さも違う。
ロッドに使われている素材や設計が違えば、手にしたときの感覚も変わってくる。
だから表示は、ロッドを知るための手がかり。
答えそのものではない。
ちゃ〜坊
「じゃあ、いっぱい触ったほうがいいんだ」
みなとじい
「比べられるならな」
ちゃ〜坊
「曲げて、比べて……」
みなとじい
「何が違うのか考えてみる」
ちゃ〜坊
「また考えるのか〜(^^;」
みなとじい
「001で何を聞いてたんだ、おまえは」
そしてロッドの曲がり方には、昔からもう一つ分かりやすい表現がある。
8:2調子、7:3調子、6:4調子などという呼び方だ。
ちゃ〜坊
「ハチニ……ナナサン……ロクヨン……」
みなとじい
「どうした?」
ちゃ〜坊
「なんか野球の試合結果みたいになってきた」
みなとじい
「違う」
数字は、どのあたりを中心にロッドが曲がるのかを見るための目安。
負荷をかけたときにロッドが描く曲線は、ベンディングカーブとも呼ばれる。
ちゃ〜坊
「ベンディングカーブ……」
みなとじい
「覚えなくても、魚は釣れるぞ」
ちゃ〜坊
「じゃあ、なんで教えたの〜!」
みなとじい
「どこかで聞いたとき、“何それ?”ってならないだろ」
ちゃ〜坊
「あ……なるほど」
でも、本当に大切なのは言葉を覚えることではない。
なぜ、こんなにいろいろな曲がり方のロッドがあるのか。
そこを考えてみると、ロッド選びが少し面白くなってくる。
みなとじい
「ちゃ〜坊。魚って、みんな同じようにエサを食べると思うか?」
ちゃ〜坊
「違うの?」
みなとじい
「メバルみたいに、エサを吸い込むように食べる魚もいる」
ちゃ〜坊
「ほうほう」
みなとじい
「そんな魚なら、食いついたときに違和感を与えにくい、柔らかく曲がるロッドが使いやすいこともある」
ちゃ〜坊
「魚の食べ方まで考えるんだ!」
みなとじい
「カサゴやムラソイなら、掛けたあと根に潜ろうとするだろ?」
ちゃ〜坊
「潜られたら?」
みなとじい
「困る」
ちゃ〜坊
「それは分かる(^^;」
みなとじい
「小さなアタリを感じながら、掛けたら根から離す力も欲しくなる」
ちゃ〜坊
「あれ?」
みなとじい
「どうした?」
ちゃ〜坊
「ロッドって、魚の大きさだけで選ぶんじゃないんだね」
みなとじいが、少し笑った。
みなとじい
「やっと面白くなってきただろ?」
魚の食べ方。
泳ぐ力。
釣る場所。
使うルアー。
どのくらい遠くへ投げたいのか。
いろいろ考えていくと、
「この魚なら、この硬さ」
という単純な話ではなくなってくる。
そして、それが分かってくると、釣具屋さんに並んでいるたくさんのロッドも、少し違って見えてくる。
ちゃ〜坊
「よ〜し、分かった!」
みなとじい
「何が?」
ちゃ〜坊
「ロッドに書いてある言葉だけで決めちゃダメ!」
みなとじい
「うん」
ちゃ〜坊
「実際に触って、曲がり方を見て、何に使うのか考える!」
みなとじい
「うんうん」
ちゃ〜坊
「じゃあ、この二本だったら……」
ちゃ〜坊は、最初に持っていた二本のロッドを見比べた。
ちゃ〜坊
「どっちを買えばいい?」
みなとじい
「何を釣るんだ?」
ちゃ〜坊
「まだ決めてない」
みなとじい
「そこから考えろ〜!(^^;」
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